~ウイルス対応を「組織基盤」の強化につなげる~
茨城NPOセンター・コモンズ代表理事のメッセージ
新型コロナウイルスの感染拡大は世界に広がり、経済的にもリーマンショック級の衝撃が起きています。部品や原料の仕入れが困難になったり、売上が見込めなくなったり、子どもの預け先がなく従業員が出社できないなど、様々な困難に直面しておられることと思います。
これがいつまで続くのかもわかりません。NPO業界は世界的な取引をしているわけでもなく、事業規模も小さいのですが、影響は起きていて、それぞれが対応を模索しています。
コモンズがまず行ったことは、テレビのニュース情報が伝わりにくい外国人を対象に、感染予防と感染が疑われる際にすべきことに関する情報を多言語化して発信したことです。保健所などに電話しても日本語が通じない場合に備えて、英語とポルトガル語で通訳する体制もつくりました。
この情報を、県内の小中学校を通じて外国籍の子どもがいる家族に流してもらいました。感染予防の伝え方に苦労していた学校や医療現場から助かると言っていただけました。
今回の状況は、災害と同じ異常な事態です。そのような時に弱い立場に置かれている人のことを考え、迅速柔軟に対応するのがNPOの役割です。
図書館から運動場まで一斉に休館となり、あらゆる行事が中止になっています。リスク・マネジメントは難しい問題です。突然学校が休校になり、学齢児をもつ保護者の多くが、子どもの預け先をどうすれば良いか悩みました。
貧困世帯の子にとって、学校給食がなくなることは栄養不足につながります。それを補おうと、食事つきで学習支援や居場所を提供している子ども食堂が県内に70近くありますが、行政から場所の使用が認められないと言われたり、中止を求められるケースもあります。感染のリスク対策も大事ですが、場や食の機会、人のつながりがなくなることもリスクです。
何に留意しつつ何は継続すべきか、各団体が判断しやすくするために、コモンズは県内のNPOに、コロナウイルス対応についてアンケートを行い、その結果を紹介したり、様々な関連情報をまとめたサイトを作成しました。
水害で浸水リスクが迫っているときも、早めに避難する人もいれば、自分は大丈夫と普段どうりの人、不安だけれどどうして良いかわからない人もいました。自分の身は自分で守るという「自助」は基本ですが、それだけでは資力、移動手段、仲間がいる人は助かって、それらが弱い人は取り残され、苦しむことになります。
車も送迎してくれる家族もいないけれど、通院が必要な人の送迎や院内付き添いを、私たちはボランティアで行っています。病院内での付き添いをボランティアが今すべきか、悩ましいことです。でも「○○の恐れがあるので」の一言でやめるわけにもいきません。
感染の急激な拡大による医療崩壊や社会の混乱は防がなければならず、様々な規制、制限を伴う公的な要請や措置が発動することはやむを得ない面もあります。災害であれば、避難勧告から避難指示に移るかどうかという局面です。
その時に忘れてはならないのは、その指示によって、上記のように学ぶ機会、食の機会、働く機会、医療を受ける機会、人とのつながり、居場所を失う人たちをどうするか、ということも皆で考え、自己責任で済ませるのではなく、行政がカバーしきれないのであれば、市民同士で知恵を出して協力することです。
国家の力だけではなく、市民社会の力も問われているのだと思います。危機に直面したときこそ、困難に直面する人のために何ができるか、何をすべきか、それぞれが考え、話し、ともに行動しましょう。
2020年3月13日
(一般社団法人 茨城県経営者協会『茨城経協2020年3月号』寄稿文を一部修正)